【書評】中野信子『空気を読む脳』に見る、「K-1自粛要請と同調圧力」

こんにちは。ハルです。

今月22日に自粛要請を受けながらも決行された「K-1」イベントについて、以下の続報が出ました。

イベント開催の是非を問う前に、以下のような”世間の反応”が気になります。

「高校球児も我慢してるのに」「卒業式・結婚式まで中止してるのに」などの、「みんな我慢しているんだから、お前たちも我慢しろ」という反応です。

このような”同調圧力文化”に違和感を感じるのは、私だけではないはず。

今回は「脳科学から解き明かす”同調圧力”」について、解説します!

中野信子『空気を読む脳』

先日、以下の本を読み終えました。

『サイコパス』などの著書やコメンテイターとして有名な、中野信子氏の新著です。

本書では「空気を読む」日本人の心性について、脳科学を中心としたエビデンスをもとに論じられています。

今回のK-1開催について、本書の内容を交えて解説します!

「日本語には6種類ある。ひらなが・カタカナ・漢字・ローマ字・絵文字、そして”空気”だ」というツイートがバズっていました。

今回の同調圧力は「不倫バッシング」と同じ

スポンサーから広告収入を得るために、テレビ局はあらゆる手段を使って視聴率を稼ぎます。

そのための”鉄板ネタ”として、芸能人の不倫ニュースが報道されています。

ネガティブなニュースほど、記憶に残り拡散されやすいためです。

(100万部超の名著『ファクトフルネス』では、この現象を「ネガティブ本能」と解説しています)

不倫をバッシングする人は、”各々の正義”を振るいます。

各々の正義

  • 「子供や奥さん(旦那さん)がかわいそう」
  • 「他人の不幸の上に、幸せになってはいけない」
  • 「俺だって不倫したいのに、すぐに芸能界復帰して許せない」

これらに共通するのは、「自分が懲らしめてやらねば」という”義憤”に駆られている点です。

今回のK-1開催は「カネに目がくらんで人々を危険に晒したのに、法律的にはお咎めなし」という見解もあります。

「法律では罰せないなら、自分たちで制裁を与えよう」という”同調圧力正義マン”が現れるのです。

K-1主催者は「フリーライダー」!?

コミュニティ(学校・会社・社会など)で、コストを負担せず利益を得る者を”フリーライダー”と呼びます。

(上記の「コスト・利益」は金銭だけでなく、時間・快楽などの広義的な意味)

フリーライダーの例

  • 【学校】掃除当番をサボる
  • 【会社】部下の手柄を横取りする上司
  • 【社会】転売・マルチ商法・売春など

コミュニティにおける「フリーライダーの割合」が大きくなれば、組織自体が崩壊してしまいます。

集団を作ることで生き延びた人類は、”フリーライダー検出アンテナ”として「妬み」の感情が使われるのです。

今回のK-1主催者は、自粛要請を受け入れずにイベントを決行しました。

その決断を「社会の秩序を乱すフリーライダー」と妬む人たちが、積極的にバッシングに参加しているのです。

「働きアリの法則」にあるように、ある程度のフリーライダーがいるコミュニティの方が正常です。

【働きアリの法則】組織の構成員は、2割が熱心・6割が普通・2割がサボる

ライフネット生命創業者の出口治明氏も「100%リーダーに従う集団は、ヒトラーやスターリンの世界にしかいない」と著書で言っています。

コラム:正義マンの正体は「協調性が高い人」!?

京都大学の高橋英彦准教授が「最後通帳ゲーム」という実験を行いました。(詳細は以下ツイート画像参照)

簡単に言えば「不公平な仕打ちに対して、自分が損をしても相手に復讐するか?」を確かめています。

実験結果によれば「協調性が高く、自己犠牲もいとわない」脳の特徴を持つ人ほど、相手に復讐する確率が高まります。

また世界で見ると、この脳の特徴は日本人に最もよく見られます。

「世界で最も真面目で実直だが、怒らせると何をするかわからなくなる」人種が多いのです。

江戸時代の仇討ち・神風特攻隊・半沢直樹など、多くの”復讐劇”が日本でヒットするのも頷けます。

「K-1強行開催」バッシングの目的

ここ10年来、日本は大規模な災害に見舞われています。そのたびメディアは「絆」という言葉を多用しています。

このような言葉を頻繁に浴びることで、「フリーライダーへの攻撃」を合理化してしまいます。

(社会のルールを守る誠実な人ほど、フリーライダーへの攻撃が加速するのは前述の通りです)

一方、バッシング自体もコストがかかる行為です。(時間・労力・訴訟リスクなど)

それでもバッシングを辞めない理由は、その行為により”報酬”を得られるためです。

バッシングにおける報酬

  • 他者を引きずり落とし、みじめな姿を晒させることで、胸がスカッとする感覚(ネット用語における「メシウマ」)
  • 「悪者を叩く自分」という自己陶酔

このような背景もあり、(K-1開催を含む)バッシング自体が”エンターティメント”として機能しているのです。